父が亡くなったら銀行口座はどうなる?凍結の理由・仮払い制度・相続手続きの流れ
口座はいつ・なぜ凍結されるのか、仮払い制度で先に引き出せる金額の計算方法、凍結解除に必要な書類とかかる期間までを、根拠となる制度に基づいて整理しました。
更新日:2026-09-06
仮払いの上限
150万円/金融機関
仮払いの計算式
残高×1/3×法定相続分
凍結解除の期限
法律上の定めなし
協議が長引く場合
1年以上かかることも
なぜ口座は凍結されるのか
銀行は、口座名義人が亡くなったことを把握すると、その口座を「相続財産の保全」として凍結します。これは、相続人の一人が他の相続人に無断で預金を引き出してしまう、いわゆる「使い込み」を防ぎ、遺産分割が終わるまで相続財産をそのままの状態で確定させるための措置です。
凍結は法律上の義務ではなく、各金融機関の内部規定に基づく運用です。そのため、対応の細かな流れは銀行ごとに多少異なります。
凍結はいつ・どうやって起こるのか
死亡してから口座が凍結されるまでの日数に、法律上の決まりや目安はありません。市区町村に死亡届を提出しても、その情報が自動的に銀行へ伝わることはなく、金融機関は基本的に別の経路で死亡の事実を知ります。
きっかけとして多いのは、家族からの死亡連絡、相続手続きについての窓口への問い合わせ、残高証明書の発行依頼、新聞のお悔やみ欄などです。逆に言えば、家族が銀行に連絡するまでは口座が凍結されずに残ることも珍しくありません。
凍結前に引き出した預金を勝手に使うと、他の相続人とのトラブルや、相続放棄ができなくなるリスクにつながる可能性があります。生活費・葬儀費用が必要な場合は、次に説明する仮払い制度の利用を検討してください。
凍結後にできなくなること
- 窓口・ATMでの引き出し
- 公共料金や家賃、サブスクなどの口座引き落とし
- 振込・振替の手続き
- 定期預金の解約(原則)
仮払い制度で先に引き出せる金額(計算例つき)
2019年の相続法改正で新設された民法909条の2の「預貯金の払戻し制度」を使うと、遺産分割が終わる前でも、相続人が単独で一定額まで払い戻しを受けられます。家庭裁判所の手続きを経ずに、銀行の窓口だけで対応できるのが特徴です。
払い戻せる金額は、次の2つの基準のうち低い方が上限になります。①相続開始時の預金残高 × 3分の1 × 払い戻しを行う相続人の法定相続分、②同一の金融機関(複数支店合算)につき150万円。
例えば、A銀行の残高が900万円で、相続人が配偶者と子1人(法定相続分はそれぞれ2分の1)の場合、子が単独で引き出せる金額は「900万円 × 1/3 × 1/2 = 150万円」となり、上限の150万円にちょうど到達します。150万円を超える資金が必要な場合は、家庭裁判所への申し立て(保全処分)が必要になります。
払い戻した金額は、後日の遺産分割で「先に取得した相続分」として調整されます。上限額や必要書類は金融機関ごとに運用が異なるため、実際の手続き前に窓口へ確認してください。
凍結解除・払戻しに必要な書類
- 遺言書がある場合
- 検認調書(自筆証書遺言の場合)、被相続人の戸籍謄本、遺言執行者または相続人の印鑑証明書、銀行所定の払戻依頼書
- 遺言書がない場合
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍を含む)、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書(発行から6ヶ月以内を求められることが多い)、遺産分割協議書または相続人全員の実印を押した銀行所定の用紙
手続きの大まかな流れ
- ① 銀行へ死亡の連絡をする(この時点で口座が凍結される)
- ② 残高証明書を取得し、相続財産を確認する
- ③ 戸籍謄本など必要書類を収集する
- ④ 遺言書がなければ、相続人間で遺産分割協議を行う
- ⑤ 窓口に書類を提出し、解約・名義変更・払い戻しを行う
凍結解除までにかかる期間の目安
解除までの期間は状況によって大きく異なります。遺言書があり、内容に争いがない場合は比較的早く進みますが、遺言書がなく遺産分割協議で決着がつかない場合は、協議が成立するまで凍結状態が続きます。相続人同士の話し合いが長引けば、1年以上かかることも珍しくありません。
急いで生活費や葬儀費用が必要な場合は、遺産分割の完了を待たずに前述の仮払い制度を利用できます。
自分でやるか、専門家に頼むか
戸籍謄本の収集や書類作成は自分で行うことも可能ですが、相続人が多い場合や、遠方の役所とのやり取りが必要な場合、複数の金融機関に口座がある場合は、行政書士や司法書士に代行を依頼することもできます。
よくある質問
Q凍結される前に葬儀費用のために引き出しても大丈夫?
A法律上は禁止されていませんが、他の相続人との間で使途をめぐるトラブルになりやすく、相続放棄を検討している場合は「単純承認」とみなされるリスクもあります。可能な限り、引き出す前に他の相続人へ相談し、使途がわかる領収書を残しておくことをおすすめします。
Q複数の銀行に口座がある場合、150万円の上限はどう数える?
A上限は「金融機関ごと」に適用されます。A銀行で150万円、B銀行で150万円というように、口座がある金融機関の数だけ上限が設定されます(ただし同一銀行内の複数支店の口座は合算されます)。
Q凍結解除の手続きに費用はかかる?
A銀行の窓口手数料自体は無料のことが多いですが、戸籍謄本や印鑑証明書の取得費用、専門家に依頼する場合の報酬は別途かかります。
参考にした情報源
ご利用にあたって
本記事は一般的な情報を整理したものであり、法律・税務・宗教上の助言ではありません。制度・費用・期限は変更される場合や個別事情により異なる場合があるため、実際の手続きにあたっては市区町村窓口、金融機関、専門家、菩提寺等にご確認ください。